
2025-11-29
密かに、アイロンをかける時間が好きだ。
思考が澄み、何も意図せず、ただ静かに時間が流れていく。
あの数十分は、私の小さな贅沢だ。
アイロン台は高いほうがいい。
立ったまま重みをかけて布を伸ばすと、洗いざらしのシャツが二枚、三枚と整っていく。
日ごろの雑念が静まり、時間までゆっくりと止まるかのようだ。
最近のアイロンは、プラグを差すと数秒で「ピッ」と温まり便利なものだ。
スチームアイロンの手軽なものではどこか物足りない。
しっかり押し当て、皺がさっと消えるあの感触が好きだ。
アイロンをかけていると、
小4の娘がときどき「わたしも」と近づいてくる。
ランチョンマットやハンカチ、マスクを並べ布を丁寧に滑らせている。
その横顔を見るのが頼もしい。
ただ、アイロンがけをしていると、ふと思い出す出来事がある。
買い物同行を依頼してきた方が、打ち合わせの途中で急にキャンセルした。
「忙しいから、そっちが全部決めて」
「好みが分からないからプロに頼んだ」
「子育てで時間がない。ノーアイロンの服がいい」
そんな言葉が並び、やり取りそのものが気に入らなかったのだと思う。
――アイロンが苦手な人は多い。
あの静かで澄んだ時間が嫌われるのは、不思議だ。
大切な服を整えると、心もまっすぐに澄む。
ほんのささやかな所作が、生き方を整えてくれる。
アイロンがけは、何気ない日々の中にある“無為の幸福”だと思う。
これを「退屈」と捉えては見えてこない、まさに「幸せ」そのものなのだ。
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