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服はモノか、身体の一部か|装いの「感覚」はどう育つか

2025-12-30

服は「モノ」か、「身体の一部」か

私は、服を身体の延長として捉えています。
つまり、服は【身体の一部=自分】。

一方で、多くの人は服を【着飾るためのモノ】として扱っています。

  • 身体の延長としての服 = 自分そのもの
  • 着飾るための服 = モノ

この捉え方の違いが、
「服を着たときの感覚」を持てるかどうかを分けています。

感覚を持つ人は、触感を言語化できる

服を身体の一部として捉えている人は、身に付けたときの感覚を知っています。

重さ、硬さ、しなやかさ、張り感、肌離れ。

それらを「何となく」ではなく、言葉として認識できる。
これが、触感の言語化です。

感覚は、才能ではありません。
構造を知ることで、誰でも深くなっていきます。

服の構造を知ると、感覚は研ぎ澄まされる

たとえば、ジャケット。

ジャケットの内側には「芯地」が入っています。
芯地が接着芯の場合、どうしても軽く、平面的な印象になります。

一方、本格的なテーラードジャケットや男性スーツには、馬の鬣(たてがみ)や尾の毛を用いた「毛芯」が使われています。

毛芯は、網戸の網目のような構造を持ち、適度なハリを保ちながら、しなやかに身体に沿います。

芯地があることで、ジャケットの立体感は自然に保たれます。

肩が変わると、着心地は別物になる

ジャケットの着心地を左右する最大の要素は「肩」です。

  • 肩パッドの厚み
  • 肩まわりのいせ込みの技術

これによって、フィット感も、重さの感じ方も大きく変わります。

良いジャケットは、肩に違和感がなく、重さも感じない。
まるで肩に吸い付くような感覚があります。

肩の形も重要です。錨型でも、なで肩でもないこと。
それだけで、身体のラインは驚くほど美しく見えます。

さらに、腕まわりには適度なゆとりがあり、なおかつ、すっきりしていること。
これが良いジャケットの条件です。

ジャケットが持つ本来の役割

ジャケットは本来、男性を「威厳があり、頼りがいのある存在」に見せるために生まれた服です。

そのため、華奢な体型の人が着ても、体つきが引き締まり、存在感が生まれます。

仕事の場では、「仕事ができそう」「任せられる」という印象を、無理なくつくってくれます。

ジャケットは、スタイリッシュさと高級感を同時に叶える服。
だからこそ、ジャケットは私にとって身体の一部なのです。

ジャケットは「固い服」ではない

「ジャケットは固すぎる」と感じる人も多いでしょう。

けれど、結婚式やお祝い事など、クラス感のある装いが求められる場面では、ジャケットほど相応しい服はありません。

私は日常的にジャケットを着ていますが、デニムやスニーカーと合わせてドレスダウンするため、
気負いはありません。

カジュアル始点のコーデではない

最近よく耳にする「カジュアルを格上げする」という言葉に、私は少し違和感を覚えます。

カジュアルを引き上げる必要はありません。
必要なのは、ドレスウェアをどう“下ろすか”という視点です。

ジャケットやスラックスは、身体を立体的に見せ、品格や威厳を与えるために作られてきました。
つまり、最初から完成度の高い構造を持っています。

その服を、デニムやスニーカー、カットソーと組み合わせることで、自然に余白のある装いが生まれます。

カジュアルを飾るのではなく、ドレスを生活の側へ引き寄せる。

この発想の転換が、装いを「情報」から「身体の延長」へ戻してくれるのだと思います。

なぜ多くの人は感覚を持てないのか

多くの人がこうした感覚を持てないのは、センスの問題ではありません。

  • 感覚を言語化する視点
  • 服の構造や役割
  • コーディネートの理論
  • ファッションに対する哲学

これらを知らないだけです。

だからこそ、情報や見た目に振り回され、服との関係性が深まらない。

服を身体の延長として捉えたとき、「着たときの感覚」は、少しずつ育っていきます。

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