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「どんな体型の人でも美しい服」は、誰も美しくしない

2026-01-28

「どんな体型の人でも」という言葉の問題点

先日、繊研新聞の記事を読んで、強い違和感を覚えた。

とある縫製工場発のアパレルブランドが、
わずか175グラムの軽さでダウン級の温かさを実現した「中綿ジレ」を販売したところ、
開始1分で目標達成、総額218万円の売り上げを記録した、という内容だった。

記事では、「どんな人でも美しく快適に過ごせる服」として、
機能をずらりと並べた売り文句とともに、
多くの人が抱える現実的な悩みに応える商品だと紹介されていた。

  • デザインで選ぶと防寒性が劣る
  • 防寒重視で選ぶとお洒落じゃない
  • 外では丁度よくても室内では暑い
  • 家で気軽に洗いたい
  • インナーダウンはキレイ目なシーンだと恥ずかしい
  • 重くて肩が凝る …など。

当方の見解

しかし、私の見解は少し違う。

「デザインで選ぶと防寒性が劣る」
これは正しくない。
美しく、かつ暖かい服は昔から存在している。
ただし、それらは総じて高価だ。

「防寒重視だとお洒落ではない」
これも正しくない。
アウトドアウェアやウィンタースポーツ向けの高級ダウンには、
機能と同時に素材や設計による高級感が備わっている。

つまり問題は、
機能かデザインか、ではなく、何を基準に選んでいるかだ。

快適さの過剰欲求

要望を言い出したら、キリがない。

「外では丁度よくても、室内では暑い」
それは、脱げばいい。

細かな要望をすべて服に求め始めると、
装いは機能の集合体になり、
美しさという文脈は切り落とされる。

結果として生まれるのは、
誰にも強く作用しない
平均的で、曖昧な「丁度よい服」だ。

記事の中で、特に引っかかった一文がある。

「どんな体型の人でも美しく快適に過ごせる」

一見すると、優しく配慮に満ちた言葉だ。
けれど私は、ここに強い違和感を覚えた。

どんな体型の人でも、という設計の服は、
裏を返せば、誰の身体も本当には見ていない。

どんな体型の人でもは、誰の身体も見ていない

どんな体型の人でもという服は、一見すると肯定的で優しい服のように見える。

しかし、

  • 体型の違い
  • 骨格の差
  • 身体の線

こういった個性を消し、覆い、均一化することで、誰でも同じように整って見える状態を作る。
実際は、「体型隠しの設計」だ。

体型隠しの構造

体型の違い、骨格の差、身体の線。
それらを消し、覆い、均一化することで
「誰でも整って見える」状態をつくる。

中綿ジレのように、

  • 柔らかい素材で
  • 身体と距離を取り
  • 線を曖昧にする

こうした服は、体型だけでなく、
着る人の輪郭や年齢までも消してしまう。

若い人が着ても、
年齢を重ねた人が着ても、
同じように見える。

それはつまり、
「老けて見える」ということだ。

快適と美しいは、同時に成立しないことがある

「快適で、美しい服がいい」
これは多くの人が無意識にそう願っている。

けれど、
快適さと美しさは、必ずしも同時に成立しない

美しいから、結果として快適であることはある。
しかし、快適だから美しいとは限らない。

この順序を間違えると、
装いは無難へと傾く。

ベーシックな服の美しさとは

洋服には文脈がある。
長い時間をかけて残ってきた形には、理由がある。

シャツ、ジャケット、コート、ニット、パンツ。
これらは流行ではなく、
身体に無理がなく、動きやすく、
結果として快適だったから残ってきた。

ベーシックな服が美しいのは、
体型を隠すからではない。

骨格、肩の傾き、首の長さ、肌の質感。
それらを消さずに、受け止める余白があるからだ。

装いの美しさとは、
服の歴史や文脈に沿った
普遍的なアイテムを
上質な素材で
余計な装飾なく、シンプルに着ること

だと思っている。

ちなみに装いの文脈を学ぶには、この書籍がおすすめだ。
ファッションの本質を学ぶ一冊|東大ファッション論集中講義

歴史に刻んだ身体に馴染む服

年齢と装いの関係を、私はこのように考えている。

  • 20代:若さ・可愛さ
  • 30代:品の良さ・エレガンス
  • 40代:質の高さ・高級感
  • 50代:威厳・落ち着き
  • 60代:軽やかさ・生き生きとした印象
  • 70代:品のある可愛らしさ
  • 80代:幸福感・やさしさ

必要なのは、若く見せることではない。
その年齢だからこそ宿る美しさを、肯定することだ。

まとめ

体型を隠すことを目的にした服や、
あらゆる要望を満たそうとする服は、
無難で丁度よい服を生む。

そしてその多くは、
年齢=生き方を肯定せず、
人を均一化し、
結果として美しくならない。

私は、装いを「処方箋」ではなく、
人生の延長として捉えている。

だからこそ、
誰にも丁度よい服に、
私は美しさを感じない。

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